年収の壁・支援強化パッケージ

政府は2023年9月27日、パートやアルバイトで働く人々が「年収の壁」を意識しないで働くことができる環境づくりを支援する対応策を発表しました。

◆106万円の壁への対応①キャリアアップ助成金のコース新設◆
配偶者に扶養された人が、従業員数101名以上の企業で働き一定の要件を満たす場合、年収106万円を超えると、社会保険への加入義務が発生します。

政府は、この106万円の壁対策として、保険料負担軽減のための手当支給や従業員の賃上げなど、労働者の収入を増加させる取組みをおこなった事業主に対して、従業員1人につき最大50万円の助成金を支給するとしました。

現行のキャリアアップ助成金に、「社会保険適用時処遇改善コース」を新設し、1人につき最長で3年間支給されます。

支給申請に際しては、提出書類の簡素化など事務負担を軽減するとされていますので、人事担当者はコースの詳細や併用メニューを確認し、対象者がいた場合は助成金申請の準備をおこないましょう。

◆106万円の壁への対応②社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外◆
被用者保険が適用されていなかった従業員が新たに適用となった場合、事業主は当該従業員に対し、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給できることが認められました。

この「社会保険適用促進手当」は、被用者保険適用に伴う保険料負担軽減のための手当であり、新たに発生した従業員負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、当該従業員の標準報酬月額・標準賞与額の算定から除外されます。

人事担当者は、算定の際に本手当が除外されているか確認をおこないましょう。

◆130万円の壁への対応/事業主の証明による被扶養者認定の円滑化◆
配偶者に扶養された人の年収が130万円を超えると、扶養から外れ、社会保険の加入義務が生じます。

政府は、この130万円の壁対策として、人手不足や繁忙期による一時的な増収により、直近の収入に基づく年収の見込みが130万円以上となる場合でも、一時的な収入変動である旨を事業主が証明することで、被扶養者認定が可能となりました。

“人手不足による労働時間延⾧等に伴う一時的な収入変動”として認定は行われますので、同一の者について原則として連続2回までが上限とされています。

人事担当者は、各人が何度認定されているかを正確に把握し、適切に運用できるよう管理体制を整えましょう。

◆配偶者手当への対応/企業の配偶者手当の見直しの促進◆
収入要件がある企業の配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの必要性・メリット・手順などの理解を深めるために、見直しの手順をフローチャートで示すなどのわかりやすい資料を作成・公表すると発表されました。

また、具体策として各地域で開催するセミナーで説明するとともに、中小企業団体などを通じて周知するとしています。

特に中小企業の人事担当者は、これらの情報を正確にキャッチアップできるよう、情報収集に努め、社内共有も欠かさずにおこなえるようにしましょう。

 

これらの対応策は、2023年10月から順次実施されます。

政府の取り組みに関する最新情報や詳細については、厚生労働省のHPをご参照いただくか、関連情報を定期的にチェックしてください。

参照:厚生労働省HP 年収の壁・支援強化パッケージhttps://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html